夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

グラウンドの真ん中に、選手が集まって行く。


一塊になって何を話しているのかは、検討もつかない。


選手が散って試合が再開したとたんに、南高をピンチが襲った。


カン!


大きく弧を描きながら上に伸びて行く打球。


あたしは息を殺した。


白球が太陽に重なり、急降下してくる。


砂ぼこりを巻き上げながら、ボールの真下に飛び込んだのは勇気だった。


……捕った。


地響きが起こった。


両校の応援スタンド、バックネット裏スタンドから、ぐわあーっと化け物の咆哮のような歓声とため息が湧いた。


ツーアウト。


でも、ピンチに変わりはない。


ふうう、とやわらかな息を吐いて、先輩が言った。


「もうじき、白黒はっきりするんだな。なあ、翠ちゃん」


「え?」


「この大会が終わって、南高が優勝して。甲子園の夏が終わったら、そしたら、夏井の事ひとりじめできるぞ」


やったな! 、なんて、先輩がいたずらめいて言った。


「夏井が引退したら、まず、何がしたい?」


それは、いっぱいある。


放課後、みんなみたいに制服デートとか、一緒にマック行ったり、学割で映画を観たり、CDを買いに行ったり。


あたしと補欠は、そのフツーができなかったから。


フツーの事がしたい。


「でもさ、あんまり独占欲丸出しにしたら、嫌われるよ。きっと」


「なに言ってんだよ。それくらいで嫌いになるかよ」


グラウンドを見つめていると、健吾がマウンドに駆けて行った。


「若奈なんか、酷かったぞ」


「え? 若奈ちゃんが?」


あー、とけだるそうに先輩が笑った。