夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

エースなんだ。


補欠を見て、改めて思い知らされた瞬間だった。


「ありがとな」


補欠はお守りを首から下げてぎゅっと握りしめたあと、何の迷いもなくユニフォームの中へ押し込んだ。


「相澤先輩。翠をお願いします」


走り去って行くその背中に太陽が降り注いで、エースナンバーを輝かせていた。


【1】


「翠ちゃん!」


応援スタンドの方から、女の人が駆けて来る。


「翠ちゃん!」


「……あ」


二年前より遥かに綺麗になった、若奈ちゃんだった。


「若奈ちゃん。すまんね、先輩かりちゃって」


「何言ってんの。こんなので良かったら」


いつでも使って、と半べそになった若奈ちゃんがあたしを抱きしめる。


「え……こんなの、って……」


先輩が悲しそうな声でシュンとしていた。


長かった髪の毛をバッサリ切った若奈ちゃんからは、バラのような爽やかで甘美な香りがした。


「もう! ほんとに……こんな無茶して」


「ご……ごめん」


「もうっ……」


とあたしの頬を両手で包み込んで、若奈ちゃんは額を合わせて来た。


「でも、翠ちゃんらしい。好きよ、そういう破天荒なとこ」


フフフ、と若奈ちゃんは笑った。


「好きな人のためならこの身を粉にして、みたいなところ、憧れちゃうなあ」


笑顔の若奈ちゃんの目から、ポロポロ涙がこぼれていた。


「私ね、夏井くんが憎たらしくて憎たらしくて」