夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

勝って欲しいのも、正直な気持ちだけど。


それも、正直な気持ちだった。


「え?」


補欠が目を丸くして、あたしに視線を落とした。


「甲子園、行けなくてもいい」


別に行けなくてもいい。


だって、あたし、気づいたの。


5日間も眠り続けて、目を開けた時、気づいたの。


その時、あたしが本当に恐れたのは、死んでしまう事じゃなかった。


補欠を失ってしまう事が何よりも怖いって事に、あたし気づいたの。


「補欠が側に居てくれたら、あたし、他は何も望まないよ」


補欠が居てくれたら、それだけでいい。


「居てくれるだけでいい」


それだけ言って、あたしは全ての感情を吐き出すように声を上げて、泣いた。


たぶん、あたしはもう、限界寸前だったのかもしれない。


「目が覚めた時、怖かったんだよ。もしかしたら、補欠に会えないまま天国行きだったのかもって。そういうのは、嫌だから」


補欠に会えないまま、何も伝えられないまま、そういう事になるのだけは嫌だから。


「翠ちゃん」


相澤先輩が子供をあやすように、あたしの肩をぽんぽん弾く。


でも、補欠は首を横に振った。


「負けるわけにはいかねえよ。翠の父さんに誓ったから」


そう言って、補欠は青空の彼方を指さした。


「あなたの代わりに、おれが翠を甲子園に連れてくって、北極星に誓ったから」


補欠。


あたし、うれしかったの。


叫んで走り出したいくらい、うれしかったんだ。


気づけば、あたしたちはもう三年生で。


出逢ってから今日までたくさんの事があって、ぶつかりながら一緒にここまで来たけど。