夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

「さん、対……さん」


あたしは、帽子のツバをきゅうっと握った。


「よしよし、上等、上等」


何が上等だというのだろう。


同点は絶対に油断なんかできない状況なのに。


それなのに、相澤先輩は満足そうに笑っていた。


「まあ、こんなもんだろ」


「じゃあ、おれは戻るんで。何かあったら」


携帯電話をかざして、本間先輩は応援スタンドに走って行った。


「ああ、助かったよ、淳平」


「いや、なんもっす」


よいしょ、と先輩があたしを抱きかかえ直した。


「じゃあ、フェンスのとこまで行こうか」


「え?」


「もうすぐ、来ると思うから。夏井」


「補欠が?」


「そ、補欠、が」


「試合中なのに、来れるの?」


フフ、と先輩が笑った。


「若奈に頼んどいたから。5回が終わったら、こっちに来るように」


フェンスに向かって芝生を下る先輩が、眩しそうに目を細める。


「ほら、来た来た。生意気なエースが」


確かに、陽射しの向こうから、人影がこっちに向かって全速力で迫って来る。


「……あ」


その姿を見つけた時、喉の奥から熱いものが込み上げて来て、泣きそうになった。


変なものだ。


昨日の夕方に会っているはずなのに。


もう、幾日も会えずにやっと会えたような、不思議な気分だった。


真っ白なユニフォームが少し土色に汚れていた。