夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

ちゃんと、その言葉には、元気に笑って、という意味が込められているんだと思う。


「待ってるからな! 翠」


うん、と頷いて、あたしはお守りをきゅっと握った。


大丈夫。


平気。


あたし、笑って戻ってくるから、待っててよ。


お母さん。


病院を出るとそこは灼熱で、どこまでもどこまでも澄んだ青が、果てしなく広がっていた。


「途中で具合悪くなったら、すぐに言ってな」


先輩はあたしを後部座席に下ろして、運転席に乗り込み、車を走らせた。


車は海岸線沿いを、ひた走る。


「先輩、ごめんね。面倒なことに巻き込んで」


ハンドルを握る先輩の髪の毛に陽射しが透けて、綺麗だった。



「何言ってんだよ、何が面倒なもんか」


先輩、ほんとに、ごめんね。


本当は、呆れてるだろうな。


「おれでよかったら、頼ってくれよ」


口ではそう言って、笑ってるけど、困ってるだろうな。


知り合ったばかりの時、二年後になさかこんな事に巻き込まれるとは思ってもいなかっただろうな。


あたしだって、そうだ。


「でも、先輩しか居ないと思ったんだ。こんな事頼めんの、こんな事に付き合ってくれんの、先輩しかいないと思った」


補欠に会わせてくれた先輩なら、力になってくれるんじゃないか、って。


「そっか。なら、喜んで付き合わせてもらう事にするよ」


可愛い後輩のために、先輩が笑った。


「あんがと、先輩。あんがとね」