夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

「子供ってのはさ、自ら親を選んで生まれてくるもんなんだ!」


その指が降りて来て、今度はあたしを指す。


「翠はなーんでか、こんなあたしを選んで生まれて来てくれたんだよね!」


こんな女のどこがいいのか、とその指で自分の顔を指した後、母は唇を震わせた。


「翠はどうしようもないやつだけどさ、あたしにとっちゃ自慢の娘なんだよね」


先生、と母が一歩詰め寄る。


「はあ……」


すると、先生はギョッとして一歩後ずさる。


母の迫力は尋常ではなかった。


「この子に……外出許可出して貰えないですか?」


目を反らしたいと思った。


「自慢の娘の頼みひとつ聞いてやれないで、何が親ですか!」


それ、は胸がえぐり取られるような声だった。


「何がっ……親ですかっ……」


「お母さんまで……」


呆れたように首を振って、先生は重い溜息を吐いた。


ゆっくり顔を上げると、母が今にも泣きそうな目をつり上げて先生を睨み付けていた。


「先生、どうかお願いします」


「親御さんが何を言い出すんですか」


困惑気味の先生を睨んだまま、母はあたしを指さした。


「この子を産んだのは、あたしです。ここまで育てたのもあたし。誰より近くで見守って来たのも、このあたし」


その直後、母が口にした言葉は他人からすれば卑劣で冷血に聞こえると思う。


「だからね、先生」


でもそれは、あたしにとっては愛情に満ち満ちた母のぬくもりだった。


「この子がどうなっちまおうと構いません!」


母の言葉に、先生は目を点にした。


「翠がどうなっちまおうとも。親であるあたしの勝手だ!」


あたしは、本当に嬉しかったんだと思う。


「な、翠。どうにでもなっちまいな!」


母の笑顔に、ひとつの嘘もなかった。