夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

「お願い」


「……お前はバカか。頭上げな」


ほら、と母があたしの両脇に手を入れて、立たせようとする。


「翠、やめろって」


「お願い!」


でも、あたしは絶対に土下座をやめるつもりはなかった。


みっともなくてもいい。


かっこ悪くても、ダサくてもいい。


「ごめん、お母さん。あたし、もう後悔したくないんだ」


「翠……」


母の手も声も、震えていた。


「お願いします。外出許可、出して下さい」


それでも、頭上に降る先生の返答は毅然としていて、


「できません」


やっぱり、くじけてしまいそうになる。


でも、くじけてなんかいられない。


もう、プライドなんていう不要な物は捨てようと思った。


もう、意地だけがあたしを動かしていた。


「後悔……したくないんだよ」


ぽとぽと、床に涙が落ちる。


「いいよ、死んだって。半分死んでるような命に、別にそんな執着する気とか……ないし」


細胞を全部摘出しない限り、完治は難しいわけだし。


その全摘をするとなると、何かしら後遺症が残るらしいし。


記憶障害、言語障害、歩行障害。


それら以外にも、いろいろと可能性があるらしい。


だから、100歳まで生きようとかは望まない。


「でもさ、これだけは諦めらんなくてさ……お願い。外出許可、出してよ」


長生きしようなんて、望んだりしないよ。


「お願い」


「簡単に死ぬなんて言葉、口にしないでくれませんか」


先生が言いたい事は、痛いほど良く分かる。