夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

「……それでも、ダメだったら?」


「何言ってんの。そこを納得させんのが勝負だろ」


背中がしゃんとした。


「うん……うん!」


そうか。


これは、ひとつの勝負だ。


譲る事のできない、死にものごるいの勝負だ。


「じゃあ、あと15分くらいでそっちに着くから」


それだけ言って、先輩は一方的に電話を切った。


なんでなのか、折れかけていた心はすっかり立ち直っていて、フラフラの体の底から不思議な力がみなぎった。


あたしを立ち直らせた先輩は、男の中の男だと思う。


さすが、南高を甲子園に導いた元エースだと思った。


――そこを納得させんのが勝負だろ


補欠や健吾が慕う理由が、みんなに慕われている理由が、分かるような気がした。


もうダメだ、無理だ、なんて簡単に口にした事が恥ずかしくてたまらなくなった。


――親や先生に反対されて諦めるなら、それくらいの気持ちしかないって事なんじゃない?


きっと、先輩はあたしの本気度を確認したんだと思う。


あたし、諦める事なんかできない。


そんな事くらいで簡単に諦められるなら、最初から言わなかった。



「お母さん、先生。お願いします」


今まではわがままを言えばどうにかなると思っていたから、一心不乱に頼み込むなんてバカバカしいって思っていたけど。


そんな常識知らずのあたしの背中を押してくれたのは、先輩の言葉たちだった。


――そこを納得させんのが勝負だろ


点滴の針を引っこ抜いたところがシクシク痛み出す。


病衣ごとその部分を押えつけて、あたしは床に両膝を着いた。


「あたしに、外出の許可、出して下さい」


額を床に着けるとひんやりした。


それで、くらくら眩暈がした。