夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

それでも。


「会いたい……」


必死に絞り出した声はかすれて、風にさらわれてしまった。


ひゅうっと風が吹いて、ベッドをぐるりと囲むカーテンがふくらむ。


あたし、何やってんだろう。


こんな場所で泣いて、惨めになって、バカみたいだ。


彼女のくせに応援にすら行けなくて。


あたし、何やってんだろう。


こんな事くらいで泣いてる場合じゃないのに。


補欠はもっともっと苦しい思いをして、それを乗り越えて、3年越しの夢を掴もうとしてんのに。


涙がつうーっと頬を伝い落ちた、その瞬間。


「入るよ」


低い、優しい声に、あたしの鼓動は一瞬だけ停止した。


「……え」


振り向くと、ベッドをぐるりと囲むカーテンがゆっくり開いて、あたしは危うく悲鳴をあげそうになった。


真っ白なポロシャツ。


その左胸元にワッペンされた数字。


【1】


前回会った時とは話にならないくらい黒く日に焼けた肌。


坊主頭に、優しい瞳。


半分、奇跡だと思ったし、半分はやっぱり運命だと思った。


そこに立って、微かに微笑んだのは、補欠だったから。


あまりの会いたさに、幻覚を見てんのか、夢をみてんのか。


これはかなり重症かもしれない。


補欠、なわけがない。


だって、決勝の前日にこんなとこに来るはずない。


それでも、どうしても瞬きする事ができなかった。