夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

「あたしの意識が戻ったの知ったら、補欠、びっくりしちゃうだろうなあ」


腰抜かすかも。


そう思ったら、すこし、わくわくした。


「会いたいなあ」


一番我慢していた気持ちを声に出してみたら、急に目の奥がじわじわと熱くなって、涙で夕陽が溶けだした。


本当は、補欠に会いたくてたまんないよ。


会いたくて、会いたくて、涙が止まんないよ。


会いたくて、会いたくて、苦しくて。


どうしよう、補欠。


でも、今は我慢するっきゃない。


勝っても負けても決勝が終わったら、明日、会えると思うから。


きっと、補欠は会いに来てくれると思うから。


背番号1を貰った、あの日みたいに。


その足で、きっと。


あたしに会いに来てくれるよね。


どんどん、どんどん、涙があふれて来る。


こんこん、こんこん、湧水みたいに。


「決勝、終わったら」


涙のせいで、声までかすれてしまう。


「補欠、会いに来てくれるかなあ」


来てくれなかったらどうしよう。


おそらく今だって、野球のことでいっぱいだと思う。


「あたしの事、忘れてないかなあ」


そりゃあ、明日決勝を控える野球バカに、彼女の事も考えろなんて言うだけ無駄なんだろうけど。


あたしは、不安だった。


「もし、本当に優勝しちゃったらどうしよう」


そしたら、ヒーローになっちゃうじゃんか。


「補欠、女の子にモテモテになっちゃうかも」


ただでさえ、補欠の隠れファンはわんさか居るってのに。