夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

「そうだったね」


コトン、と音がした。


母が棚に花瓶を置いたのだろう。


でも、カーテンの中に母が入って来る事はなかった。


少し静かになった病室。


あたしは、輝く夕陽に、右手を伸ばした。


指の隙間から、朱い陽射しが木漏れ日のように降り注いで、まぶしかった。


「キレー……」


なんか、補欠みたい。


今日の夕陽は補欠みたいに、優しい色をしてる。


「補欠、疲れてないかなあ」


疲れていないわけないか。


今日まで、全部の試合をひとりで投げ抜いてるんだから。


「肩、痛くないかなあ。夏バテしてないかなあ」


今日は、暑かっただろうな。


なんで、補欠はそんなに頑張れるんだろう。


暑っちー、もうダメだー、って。


あたしはすぐに諦めてしまうと思う。


「補欠、元気だといいなあ」


健吾や仲間と、笑っているといいな。


あの優しい目を半分にして。


ごめんね、補欠。


応援に行けなくて、ごめんね。


「試合、生で観たいなあ」


応援に行きたい。


そんな球じゃ負けるぞー! 、なんて、嫌味のひとつを手土産にでもして。


「補欠がマウンドに立ってるところ、観たいなあ」


かっこいいんだろうな。


めちゃくちゃ、かっこいいんだと思う。


補欠に会いたいと思った。


すごく、思った。