夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

補欠が……?


「だから、お前は笑ってないと。明日、南高が勝っても負けても、笑って響ちゃんに会うんだぞ」


すぐには、声が出て来なかった。


しばらく間を置いて、ようやく頷く事が出来た。


「うん」


だって、泣きそうになったから。


そんなあたしを察したのだろう。


「よし、少し休憩」


それだけ言って、母がスッと立ち上がった。


あたしはとっさに目を反らして、寝返りを打つとすぐに窓の外に視線を投げだした。


同時に目を細める。


「まぶし……」


そこには、傾きかけた夏の西日があった。


不思議でたまらなかった。


補欠の、あのやさしい瞳になってみたいと思った。


補欠は知っているんだろうか。


太陽をまっすぐ見た事があるんだろうか。


「あたしが、太陽なわけないじゃん」


生意気でつっけんどんで、可愛げの欠片もないような女なのに。


「補欠の目は……ふし穴かっ」


それでも、補欠にはあんなふうに眩しく映ってんのかと思うと、不思議な気持ちになった。


本当に、世界を明るく照らすあの太陽になれたら、どれほどいいだろうと思った。


そしたら、涙がひと粒、頬を伝い落ちた。


今度は何粒も、何粒も。


ふと、気が付いた時には本気で泣いていた。


涙が引いた頃、時計の針は16時をとうに過ぎていて、今し方まで白く発光していた太陽が金色に変色し始めていた。


西日を見てこんなに胸がいっぱいになったのは、たぶん、初めてだった。


今、補欠は何やってんのかな。