夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

白球が青空から急降下して、真下で構える勇気のグローブに吸い込まれるように入った。


勇気がグローブを高く突き上げた瞬間、


「先輩!」


あたしは先輩に飛び付いていた。


「勝ったー!」


勝手に涙があふれて、もう止まらなかった。


隣で結衣と明里が手を繋いで、泣いていた。


「夏井、めちゃくちゃかっこいいよな」


と先輩があたしのとんとんさすった。


「なんだよ……ずりいよ、こんなのっ」


かっこいいにもほどがあるってもんだ。


反則だ、こんなの。


「先輩!」


補欠以外の男に全力だ抱きついたのも、抱きしめてもらったのも、相澤先輩が初めてだった。


その腕の感触は、補欠とは全然違っていて、少し、戸惑った。


嫌だと思ったわけじゃなくて。


ただ、このひとが補欠だったらいいなと、欲張りになった。


「夏井じゃなくて悪いな」


「えっ!」


先輩に心を読まれたのかと、へんにドキドキした。


「会いたいよな、会いたくないわけないよなあ。夏井に、会わせてやりたいな」


先輩は実は平成の貴重なエスパーなんじゃないかと、心臓がバクバクした。


少し間を置いて、あたしは笑いながら首を振った。


「別に。無理に会おうとせんでも、どうせ会えるし」


なんて、嘘。


本当は無茶苦茶をしてでも、今すぐに会えたらどんなにいいか。


だけど、これを口にしてはいけないような気がして、言ったら、これは実は夢だったなんて事になりかねない気がして。


言いたくても、言えなかった。


補欠に、会いたい、なんて。