夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

背が高くて、優しく笑う男だった。


「いいやつだったよ。すごく。補欠に負けないくらい、いいやつだったよ」


先輩は何も言って来なかった。


ただ、うれしそうに、微笑んでいた。



桜花
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そして、9回の表。


「ツーアウト。あとひとつだ、踏ん張れよ、夏井!」


その直後、テレビを見つめる先輩が顔色を変えた。


「……平野か」


この場面で迎えたバッターは、4番、平野修司。


彼は、補欠の親友だ。


そして、チーム青春ライン代表Sの正体。


補欠に健吾に、修司。


同じ中学出身の仲間で、ライバルになってしまった3人。


準決勝。


9回。


この大一番でこうなるのは、運命なのかもしれないって。


3人が生まれた時にはもうすでにこうなるって決まっていたんじゃないかって。


そう思った。


同じ場所から二手に分かれて、3年後の夏、こうしてこんな形で再開して。


決勝で、じゃなくて、準決勝でこうなる運命だったんだって。


カン!


補欠が放った一球を、修司が打った。


時間が止まったんだと思った。


ぐんぐん、ぐんぐん、伸びる代表Sの打球。


「ゆっ……勇気ーっ!」


あたしは、先輩と手を繋いで叫んでいた。