「でも……」
と困惑気味の看護師さんに、あたしは怒鳴ってしまった。
「いいからあとにしてよ! 今、それどころじゃないの!」
この試合が終わるまで、待って。
そしたらもう、何でも言う事きくよ。
約束する。
「頼むよ! あとにして!」
「どうしたの、騒がしいね。何かあった?」
そこに入って来たのは、長谷部先生だった。
「あ、先生、翠ちゃんが」
助け舟を求める看護師さんに、長谷部先生は肩をすくめて笑った。
「あとにしてあげなさい。言ってもきかないよ、この子は」
「え……はあ」
先生がそうおっしゃるなら、とでも言いたげに、看護師さんはおずおずと出て行った。
試合を見守るあたしたちに、もう、言葉は要らなかった。
飛び入りのくせに、長谷部先生まで一緒になって夢中になった。
返して、返されて。
南高も桜花も、どっちも一歩も譲らない展開に、ひたすら固唾を飲んだ。
野球のルールもろくにわからないくせに、一丁前に、夢中になった。
面白いとさえ思った。
7回が終わって、7対8で南高が勝ち越し。
8回の裏、あたしはベッドの中で鮮烈なワンシーンを見た。
健吾の打球が画面から切れて、どんどん伸びて行く。
慌てたようにカメラが切り替わる。
「行け! 岩渕! 行け、ホームラン!」
両手をグッと握って、相澤先輩が息を殺す。
ドームのように巨大な弧を描いたボールが
急降下して来たのを目で追いかけながら、「あ……」声が漏れる。
その一打に飛び付いてグローブにおさめたのは、
「……修司」
桜花のセンターだった。
「えっ。桜花の平野の事、知ってんの?」
相澤先輩が弾かれたように聞いてきた。
「まあね」
以前、補欠とデート中に偶然ばったり会った事がある。
と困惑気味の看護師さんに、あたしは怒鳴ってしまった。
「いいからあとにしてよ! 今、それどころじゃないの!」
この試合が終わるまで、待って。
そしたらもう、何でも言う事きくよ。
約束する。
「頼むよ! あとにして!」
「どうしたの、騒がしいね。何かあった?」
そこに入って来たのは、長谷部先生だった。
「あ、先生、翠ちゃんが」
助け舟を求める看護師さんに、長谷部先生は肩をすくめて笑った。
「あとにしてあげなさい。言ってもきかないよ、この子は」
「え……はあ」
先生がそうおっしゃるなら、とでも言いたげに、看護師さんはおずおずと出て行った。
試合を見守るあたしたちに、もう、言葉は要らなかった。
飛び入りのくせに、長谷部先生まで一緒になって夢中になった。
返して、返されて。
南高も桜花も、どっちも一歩も譲らない展開に、ひたすら固唾を飲んだ。
野球のルールもろくにわからないくせに、一丁前に、夢中になった。
面白いとさえ思った。
7回が終わって、7対8で南高が勝ち越し。
8回の裏、あたしはベッドの中で鮮烈なワンシーンを見た。
健吾の打球が画面から切れて、どんどん伸びて行く。
慌てたようにカメラが切り替わる。
「行け! 岩渕! 行け、ホームラン!」
両手をグッと握って、相澤先輩が息を殺す。
ドームのように巨大な弧を描いたボールが
急降下して来たのを目で追いかけながら、「あ……」声が漏れる。
その一打に飛び付いてグローブにおさめたのは、
「……修司」
桜花のセンターだった。
「えっ。桜花の平野の事、知ってんの?」
相澤先輩が弾かれたように聞いてきた。
「まあね」
以前、補欠とデート中に偶然ばったり会った事がある。



