野球に無知なあたしでさえ、これはおかしいんじゃないかとはっきり分かった。
先輩の表情も固いから、なおさら。
何かが、崩れ始めていた。
淡々ひょうひょうとしていた補欠の様子がおかしい。
「やばいな」
ポツリ、と先輩がこぼした。
さっきまで順調に決まっていたストライクが、パタリと決まらなくなった。
あげくに、桜花の猛攻撃が始まった。
「岩渕ー、タイムタイムー……」
やきもきしながら、先輩がテレビに話しかける。
隣で、結衣と明里が息を飲んでいるのが分かった。
その時、
「あ、南高校がここでタイムをとりました」
先輩の祈りが健吾に通じたのか、マウンドにみんなが集まって行った。
何を話しているのかは分からない。
けれど、誰もが神妙な面持ちで、補欠に声を掛けていた。
一体、何があったんだ。
不安を抱きながら見守っていると、病室に看護師さんが入って来た。
「翠ちゃん」
そして、モニターのチェックをして、ベッドの周りをネズミのようにちょろちょろ動き回る。
ブラウン管の中では、ちょうど試合が再開されようとしていた。
「ごめんね」
看護師さんが、あたしの手首をとる。
「脈と熱、測らせてね」
「イヤ」
あたしは、らんぼうにその手を振りほどいた。
「触んな! てか、後にしてくんない?」
今、そんな事してる場合じゃないの。
南高が、ピンチかもしれないの。
補欠が、苦戦してんの。
補欠が……苦しんでんのに。
この野球に無知なあたしが、分かるくらいなのに。
先輩の表情も固いから、なおさら。
何かが、崩れ始めていた。
淡々ひょうひょうとしていた補欠の様子がおかしい。
「やばいな」
ポツリ、と先輩がこぼした。
さっきまで順調に決まっていたストライクが、パタリと決まらなくなった。
あげくに、桜花の猛攻撃が始まった。
「岩渕ー、タイムタイムー……」
やきもきしながら、先輩がテレビに話しかける。
隣で、結衣と明里が息を飲んでいるのが分かった。
その時、
「あ、南高校がここでタイムをとりました」
先輩の祈りが健吾に通じたのか、マウンドにみんなが集まって行った。
何を話しているのかは分からない。
けれど、誰もが神妙な面持ちで、補欠に声を掛けていた。
一体、何があったんだ。
不安を抱きながら見守っていると、病室に看護師さんが入って来た。
「翠ちゃん」
そして、モニターのチェックをして、ベッドの周りをネズミのようにちょろちょろ動き回る。
ブラウン管の中では、ちょうど試合が再開されようとしていた。
「ごめんね」
看護師さんが、あたしの手首をとる。
「脈と熱、測らせてね」
「イヤ」
あたしは、らんぼうにその手を振りほどいた。
「触んな! てか、後にしてくんない?」
今、そんな事してる場合じゃないの。
南高が、ピンチかもしれないの。
補欠が、苦戦してんの。
補欠が……苦しんでんのに。
この野球に無知なあたしが、分かるくらいなのに。



