夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

ぼんやりと外を見つめながら、呟いた。


「いいじゃん。そっとしといてやろうよ」


振り向いて3人の顔を見る勇気は、あたしにはなかった。


さっきよりも、雨はいちだんと弱くなっていた。


「逃げ出したくなったんだろ、たぶん。そっとしといてやろうよ、補欠のこと」


もう嫌だってんなら、止める必要ない。


補欠には補欠の大事な人生があるんだから。


それを邪魔してまで、しがみついて縛りつけたりしたくないよ、あたし。


そんな権利、あたしにはない。


補欠を苦しめる事になるだけじゃん。


「いいよ。呼ばなくてもさ。来ないって事は、来たくないって事だろ。だから、いいよ」


次第に西の空合いから光が射して、雨があがった。


「これ以上、補欠を苦しめたくないんだよ、あたし」


一瞬、凍てついた、室内。


その空気を破ったのは、洋子だった。


「何言ってんのよ、翠ちゃん」


でも、あたしは返事をしなかった。


洋子の顔を、見ることができなかった。


もう、何もかも、嫌になっていた。


さっき、長谷部先生からの説明で、全てが嫌になっていた。


「この病院で可能な治療は部分摘出と、放射線の治療にんります。完治を目指すなら、もっと最新設備が整った病院を紹介します」


どうにもこうにも、あたしの場合、本当に面倒なケースらしい。


「手術、再発。例え良性でも、これを繰り返していると、死に至る場合もあります」


癌とかそういうたぐいのものとはまた違うけど、あたしの体は確実にむしばまれているらしい。