「今さらこんな事したって、どうにもなんねえだろ」
補欠の呼吸は、ひとつも乱れていなかった。
激しく呼吸を乱して言葉を出せないあたしの体を、
「やっと捕まえた」
と、補欠が背後から抱きすくめた。
「ったく。病人がとるような行動じゃねえだろ。倒れでもしたらどうすんだよ」
もうすぐ手術なのに、と補欠の優しい声が耳をくすぐった。
「だって、だって……切りたくねえもん!」
補欠が背後から、あたしをぎゅうっと抱きしめる。
「……何で。髪の毛なんか、切ってもまたすぐ伸びるって」
平然と言った補欠の腕をするりと抜け出して、正面から突き飛ばした。
「補欠のバカ! アホ! トンチンカン!」
「はあっ? ガキか!」
「ガキでけっこう! ハゲ!」
翠……、とやっさしい声であたしの名前を囁いて、補欠はそーっとあたっしの両手を掴んだ。
「どうしたんだよ。落ち着け、な」
その、ひだまりのような瞳に吸い込まれてしまいたくなった。
急に、甘えてしまいたくなった。
あたしは半べそをかきながら、補欠に言った。
「髪の毛が短くなっても、補欠はあたしを嫌いにならない?」
だって、補欠が言ったんじゃないか。
付き合うことになった、翌日。
ほこりだらけの教材室で、言ったじゃないか。
翠の髪の毛、きれいだな、って。
だから、切りたくなかったんだ、髪の毛。
「はあ?」
一瞬、目を点にした後、補欠はプハと吹き出して、正面からあたしを抱きしめた。
「当たり前だろ」
真っ白なワイシャツから、補欠の匂いがした。
「何で分かんないかなあ。まじでヤバイんだって。ほんとに」
「……へ?」
あたしを抱きしめながら、補欠はくすぐったそうに笑った。
「翠のこと好き過ぎて、おれ、ほんとにやばいんだって」
補欠の呼吸は、ひとつも乱れていなかった。
激しく呼吸を乱して言葉を出せないあたしの体を、
「やっと捕まえた」
と、補欠が背後から抱きすくめた。
「ったく。病人がとるような行動じゃねえだろ。倒れでもしたらどうすんだよ」
もうすぐ手術なのに、と補欠の優しい声が耳をくすぐった。
「だって、だって……切りたくねえもん!」
補欠が背後から、あたしをぎゅうっと抱きしめる。
「……何で。髪の毛なんか、切ってもまたすぐ伸びるって」
平然と言った補欠の腕をするりと抜け出して、正面から突き飛ばした。
「補欠のバカ! アホ! トンチンカン!」
「はあっ? ガキか!」
「ガキでけっこう! ハゲ!」
翠……、とやっさしい声であたしの名前を囁いて、補欠はそーっとあたっしの両手を掴んだ。
「どうしたんだよ。落ち着け、な」
その、ひだまりのような瞳に吸い込まれてしまいたくなった。
急に、甘えてしまいたくなった。
あたしは半べそをかきながら、補欠に言った。
「髪の毛が短くなっても、補欠はあたしを嫌いにならない?」
だって、補欠が言ったんじゃないか。
付き合うことになった、翌日。
ほこりだらけの教材室で、言ったじゃないか。
翠の髪の毛、きれいだな、って。
だから、切りたくなかったんだ、髪の毛。
「はあ?」
一瞬、目を点にした後、補欠はプハと吹き出して、正面からあたしを抱きしめた。
「当たり前だろ」
真っ白なワイシャツから、補欠の匂いがした。
「何で分かんないかなあ。まじでヤバイんだって。ほんとに」
「……へ?」
あたしを抱きしめながら、補欠はくすぐったそうに笑った。
「翠のこと好き過ぎて、おれ、ほんとにやばいんだって」



