小箱を引き出しにしまって、あたしは部屋を飛び出した。


ズダダダ、と豪快に階段を駆け下りる。


座敷の引き戸をガーンと開けて、仏壇の前にどっかり座った。


「オーウ、今日もナイスガイ!」


位牌の中の父は、本日も爽やかに笑っている。


こざっぱりとした短髪で、優しい目をして。


「父、今日もなういぜ」


まるで少年のような笑顔の父は、今にも位牌からぽーんと飛び出して来てもおかしくないほど、実に爽やかで。


あたしは、むんずとりん棒を掴んだ。


金色のりんを棒で叩く。


カンカンカン!


カーン!


「父!」


パンッと音を鳴らして、合掌した。


「Haw are you?」


位牌にニッと微笑みかけた瞬間、背後から一撃をくらった。


「あだっ」


ペシッといい音がその証拠だ。


吉田 翠。


15歳。


ダメージ、0.1。


「痛ってえーい! ギャフン!」


振り向くと、


「なーにがギャフンだ」


母が立っていた。


「4つも鳴らすな! びっくりして、父が生き返っちまうわい」


ハア、と息を吐き出した母は美しさを倍増させていた。