夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

「じゃあ、時間だから、行くね! 健吾くん!」


甲子園に行かないと許さないから!


そう叫んで、あっこは一番線に続く階段に向かって駆け出した。


行ってしまう。


あっこが、北海道に。


「あっこ!」


健吾の足が、あっこを追い掛けようとする。


でも、それすら許されないその距離と障害物に、あたしはそっと息を殺した。


「おれ、まじで頑張るから! だから、あっこもしっかりやれ! 負けんなよ!」


あっこは振り向き、キュートに微笑んで、


「うん!」


一気に階段を駆け下りて行った。


8時2分。


予定時刻ぴったりに、あっこはこの街をあとにした。


【八戸行き 特急×× 8:02】


電光掲示板の文字が、変わった。


【新潟行き 特急++ 8:52】



しばらく、一番線ホームへ続く階段を見つめて動かなかった健吾が、振り向いて顔を上げる。


朝のラッシュがほとぼりさめた中央改札口は、ひともまばらになり、すかすかしていた。


健吾はあたしと補欠に気付いたとたん、


「げーっ! ついて来てんじゃねーよ! このバカッポー」


と顔を真っ赤にして、小走りで駆けて来た。