夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

「私、諦めなくてもいいのかな!」


あっこが両手で、第二ボタンをきつく握り締める。


健吾のハートを、握り締める。


「私、健吾くんのことずっと好きでいてもいいのかな!」


びっくりしてしまう。


いつも内気で大人しくて、キュートなあっこが、アナウンスをかき消すような声を出したのだ。


人目もはばからず、ポロポロ涙をこぼしながら。


「また会えるかな!」


「会える!」


「健吾くん!」


あっこが何かを言おうとした時、駅員さんがあっこの肩を叩く。


もう、制限時間がいっぱいになってしまったらしい。


ついに、時間が来てしまった。


駅員さんに頷いて、あっこが両手に荷物をぶら下げた。


「あっこ!」


健吾が叫ぶ。


「甲子園決めたら、その時まだあっこの気持ちが変わってなかったら! 今度はおれから告白するから……だから」


言ったのは健吾なのに。


補欠じゃないのに。


まして、あたしじゃなくて、あっこに言ってるのに。


あたしは無駄にドキドキして、足が震えていた。


金切り声に近いこえで叫んだのは、あっこだった。


「バカにしないで! そう簡単に変わるわけないじゃない!」


涙でぐしゃぐしゃのくせに、あっこはキュートに笑っていた。


とても、幸福に満ちた顔で。