夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

「健吾?」


補欠も健吾の腕を掴んで、顔を覗き込む。


「あ……うん」


健吾は小難しい顔でうつむいたあと、急にわざとらしくニヘッと笑った。


「なんだ。よく分かんねえな、女ってゆう生き物は」


健吾の声をかき消すように、キャハキャハと階段の下から無邪気な笑い声が響いてきた。


「でさー、それが原因で親とケンカになっちゃって。最悪う」


「ひさーん」


「でしょー。親ってさ、子供の気持ちぜんぜん分かってくれないよね」


「そうそう。うちのお父さんなんてさ、この間」


同じ臙脂色の蝶ネクタイの女子ふたりが、笑いながら上ってきた。


でも、あたしたちを見るなり急に無言になって、不思議そうに見ながら教室の方へ歩いて行った。


「何? 超おもーい空気」


「あれ、B組の子だよ。金パ」


「知ってる。男子は野球部じゃん。イガっちと仲良しだよね」


何? 三角? 、と彼女たちはヒソヒソ話のつもりだろうけど、しっかり筒抜けだ。


それくらい、シンと静まり返って空気が張りつめていた。


「聞いたか? 三角、だってよ。おれら三角関係なの?」


プハハと笑った健吾を、あたしはど突いた。


「はぐらかすな!」