夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

ふたりきりになると、補欠はとたんに男の目つきをする。


「てめえ! ななな……何する気か!」


そのムードたっぷりな空気に耐え切れなくて、あたしは補欠の口を左手でふさいだ。


「そう簡単に奪えると思うなかれ!」


目が回る。


ぐるぐる、ぐるぐる、回る。


てんてこまいさ。


「ここは学校だぞ! 場をわきまえろ!」


恥ずかしくてたまらなくて、わざとふざけて突っぱねると、補欠はフフと笑った。


そして、あたしの手をはがして、顔を近づけてくる。


「わきまえてるだろ。ここには誰もいねえよ」


「待て! 早まるな! 大声出すぞ」


やばい。


心臓が破裂寸前だ。


こいつは、あたしを殺す気か?


唇が触れる寸前に、補欠がつぶやいた。


「じゃあ、出してみろよ、大声」


バン。


心臓が……破裂した。


大声どころか微かな声すら、出なかった。


出せるわけがない。


体から一気に力が抜けて、膝がカクンと折れる。


気が強くて男勝りが自慢の翠様も、所詮はただの女だった。


補欠のキスにかかれば、この有り様だ。


メロメロの、けちょんちょんだ。