「何よ! 意味分かんないし! 」


もう来るな、って。


もう来るな……か。


「もう来ねえよ、補欠のバカ」


バカは、あたしだ。


「行こ、花菜ちん!」


あたしは素早く屋台を飛び出した。


「あ、翠ちゃん!」


飛び出して、一切脇見もせず、あたしは全速力で校舎の中に飛び込んだ。


何もかも振り切って、背負っているものを全部振り落とすように、猛スピードで。


校舎の中はひんやりしていた。


「待ってよ、翠ちゃん」


飛び込んで立ち止まり、乱れた呼吸を整えているところで、花菜ちんが追い付いた。


花菜ちんがクスッと笑って、あたしの肩をポンと弾く。


「嘘だよーん」


「へ?」


「あゆの写真集なんて、持ってきてないよ」


へへ、と花菜ちんは苦笑いしながら肩をすくめた。


「嘘ついたの。だって、翠ちゃん泣きそうな顔してたんだもん。誘い出すための、口実」


「……花菜ちん」


この子は不思議な子だと思う。


やっぱりマネージャーだけあると思う。


選手の体調変化にいち早く気づくように、人の表情までをも敏感に感じとる。


「行こう。教室」


花菜ちんが上履きに履き替えて、歩き出す。


「話、きくことくらいできるから」


本当に不思議な子だ。


上履きに履き替えて、あたしは奥歯を噛んで声を殺した。


涙が出る。


もう、我慢できなかった。