夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

まるで、1Bだけ時が止まったように。


「見てー、一年生の屋台」


「お好み焼き屋さんでしょ?」


「強烈ー」


「けど、なんか楽しそう」


屋台の前を通り過ぎながら、生徒たちがクスクス笑ってくる。


ギャハハと結衣の笑い声が響く中、


「響也、だめだ! 翠に刃物持たせたらだめだ!」


死人が出るぞ、と冗談抜きで目を血走らせたのは健吾だった。


ぽかんとしていた補欠がハッとして、あたしを見てくる。


「翠、お前は売り子やってろ。な」


補欠に言われちゃしょうがないな。


いっせいにどっと笑い出したクラスメイトたちに背を向けて、


「まあね。あたしに料理しろなんてこと自体が間違いなのさ! この美しい爪が泣いてるわ」


あたしはテーブルに片肘を付いてパイプ椅子にどっかり座った。


「翠」


危ないことすんなよ、と補欠が横に来た。


嬉しかった。


ただ横に来てくれたことが嬉しくて、勝手に口元がゆるむ。


「見て、補欠。この爪、可愛くない? 昨日の夜2時間もかかったんだあ」


「へえ。翠ってこういうの得意なんだな。結構うまいじゃん」


「うん。ちょー得意。うまい」


「自分で言うなよ」


今まででも力作のネイルを見せながら補欠と話していると、気をきかせてくれたのか、周りにいたクラスメイトたちがさり気なく離れて行った。


ふたりきりになった時、小銭を数えながら補欠がぽつりと聞いてきた。