夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

「うん?」


振り向いた補欠に、あたしは包丁を突きつけた。


わけの分からん年上の女にへらへらしてんじゃないよ。


他の女なんか、見ないで。


あたしのこと……見て。


ギラリと光る、包丁の先端。


あたし以外の女なんか見ないで。


「キャベツ切りな!」


突きつけられた包丁を見て、補欠はギョッとして、


「うわっ! 危ねっ」


後ろのテーブルにぶつかりながらのけぞった。


「補欠ー……」


のけぞる補欠に包丁を突きつけながら、あたしはじりじりと詰め寄った。


これじゃあ、誰が見たって殺人鬼だ。


本当に殺す気は全くない。


だけど、そうまでしてでも、あたしだけを見て欲しくて。


あたしのことだけ、見て。


補欠。


補欠はあたしを真っ直ぐ見つめて、言った。


「殺す気かよ」


なんだか、補欠はどんどん男らしい顔つきになっていく。


秋の地区大会を境に、一気に男の表情をするようになった気がする。


だから、少しだけ、前よりも補欠を遠くに感じてしまう。


「ああ? キャベツ切らないって言うなら殺す」


そう言ってケタケタ笑うと、補欠はふうと長めに息を吐いた。


「翠……お前なあ」


やっぱり優しい目を、補欠はしていた。