夏の空を仰ぐ花 ~太陽が見てるからside story

「すみませーん。ミックスふたつください」


「明太子マヨネーズ、みっつ」


「豚玉二枚」


開店早々から、うちのクラスのお好み焼きは飛ぶように売れた。


切っても切っても、刻んでも刻んでも。


バックホーで切り崩されるように消えていく、千切りキャベツのエベレスト。


包丁を握る左手が痛くなるほどだ。


「おうおうおう、翠!」


一休み入れていたあたしの背中を、


「さぼってんじゃねえぞ。切れ切れ! 切り刻め!」


健吾が肘でドンと突いてきた。


「るっせーい!」


威勢良く振り向くと、ステンレスのボウルの中の小麦粉をシャカシャカかき混ぜながら、健吾がニヘニヘしていた。


こんがり日に灼けた肌に、真っ白な小麦を付けて。


「なにニタニタしてんだよ。今日も締まりのねえ面だな、健吾」


フン、と背中を向けて包丁を握り直したあたしの耳に、健吾がコソコソ言った。


「で、食ったか? 板チョコ」


「食ってねーわい」


食えるか。


もったいなくて、傷ましくて、食えたものか。


たかがチョコ、されどチョコ。


チョコと言えども、初めて補欠から貰った貴重な物なのだ。