すると、 「待てよ」 と言って、潤一が軽く立ち上がり、 あたしの右腕をつかんでいた。 「ちょっ、し、始業式……」 と言いかけたところで、あたしは潤一の真剣な目と、 あたしの腕をつかむ潤一の右手が、少し震えていることに気づき、 何も言えなくなってしまった。 開いた窓からは、蒸し暑い風と、 雨の匂いが教室に入り込んできていた。