それゆけ、図書委員長が参ります!

 それは、一人の男子生徒だった。

 異国の童話から飛び出してきたかのような燃えるような紅の髪と目は、窓から差し込む夕陽と同化している。

 夕吉は素直に、綺麗だなと感じた。


 棚の前で並ぶ本を眺めていた男子は、直ぐに夕吉に気が付いた。


「はじめまして」

 そう言って微笑む男子を夕吉は知っていた。


 少し前に、図書室で千晴に迫っていた男子。

 その前にも、千晴が来るより先に図書室に頻繁に来てはシェイクスピアに関する本を借りていた男子。


「きみ。昨日、旧校舎に来てた?」

 挨拶も名乗ることもしないまま、夕吉は一方的に質問する。

 男子は目を真ん丸くして驚いた表情になったものの、すぐに愉しげな笑みを返した。


「うん」

 そして夕吉が何かを言わんとする前に、答えを続けた。


「そうだよ。図書委員長の思ってる通り。昨日のコトの犯人は、俺だ」


 夕吉は何も言わなかった。

 男子は続ける。


「図書委員長のフリをして旧校舎で不良を潰したのも、その不良にけしかけて番長である近衛隆太を倒させようとしたのも、ついでに近衛隆太に不良をやったのは図書委員長だと思わせてキミを倒そうとしたのも、全部この俺」


 自分のした事に何とも思っていないかのように呑気に話す男子。

 夕吉は別段、気にしない。

 昨日、近衛に殴られた腹部は痣になるほどの痛さだった。そうした犯人が目の前に居る。

 それでも夕吉は、これ以上他人と関わり合いになる方がよっぽど嫌だった。


 その様子に納得いかないのは、男子の方だった。

 世界最大の難題を突き付けられたような顔で夕吉を見て、

「あれぇ?なあ、怒らないの?」

 と尋ねてくる。


 うざったいなあと思いつつ、夕吉は、ひとつ気になっていたことを尋ねてみる。


「彼女にナイフが当たりそうになったとき、本を投げたのも、きみ?」


 今度こそ男子生徒は驚いたような顔をして、僅かに固まった。