それゆけ、図書委員長が参ります!

 るらるららん、と弾むようなワン・ツー・ステップで図書室までやって来た千晴は、誰もいないのをいいことに大声で名前を呼んだ。


「徒野くーん!!」


 いつもであれば彼にとって神聖な場所に雑音を吐いたとして直ぐに「煩い」と叱責が飛んできそうなものの、何故か何も反応がない。

 彼のことだから読書に没頭しているんだろうかと思いつつ、千晴が一歩踏み出したときだった。






「図書室で奇声をあげるな」

 静かで落ち着いているようで、聞き手を畏縮させるような声。

 望んでいた声よりも数段低い声に千晴が首を傾げていると、奥の方から長身の男が姿を現した。

 千晴の知らない人物だった。



「公共の場では、みっともなく声を上げるものじゃない」

 上から無理矢理正そうとする男の喋り方。


 千晴は、直ぐさまぴーんとくる。こいつは教育者だ、と。


 長いものには巻かれろということわざを千晴は知っていた。

 すぐさま頭を下げて「すみませんでした」と謝っておく。




 すると、元の位置に戻そうとした頭が上がらない。


「あれ?」

 それどころか上から押さえつけられているような…まるで“誰か”が上から頭を押さえつけているような。



「え、え、なんでぇ?うぇ、離してください!!」

 ぐぐぐ、と押さえつける男の手を退けようとすると、案外すんなりと解放される。

 勢いよく顔を上げ、睨むように千晴が男を見ると、男は得意そうにそれ見たことかと笑っている。サディスティックに。




「ほぅら。口先だけだから直ぐに同じ過ちを繰り返す」