「…わっ!」
さらに近衛が走る速度を上げたために、千晴は足をもつれさせた。
転んでしまう…と目を見開いた時には、千晴の体はふわりと浮かび上がり視界は変わる。
どうやら俵担ぎのように近衛に抱えられたらしい。
(すごい、走ったままこんな芸当ができるなんて…!)
千晴は、目を白黒させながら遠ざかっていく景色を眺めた。
「…九十九さんも知ってるかもしれないけど、」
「……?」
一人分の重さを背負い走りながら、どこにまだそんな体力があるのか近衛は小さく呟いた。
風や周りの音で聞きづらいものの密着しているために千晴にも届く。
「俺、いじめられてたんだ」
走っているせいか、近衛の声は僅かに疲れて沈んで聞こえた。


