それゆけ、図書委員長が参ります!


 と、突然近衛は駆け出した。


「ひっ…」

 勢いよく体が前に傾いたため、千晴は慌てて足を前に出すしかない。


 (どうして、どうして!?)


 “どうしてこんなことになったのか。”

 そんな事を考え始めたらキリがない。


 千晴は、頭の中が若干パニックになりながらも必死に転げるように足を動かしていく。


 その度に、コツン、カツンとアスファルトの地面にローファーがぶつかり、音を響かせた。




 (…も、もし、)

 まるで今の自分は、赤い靴のお話にでてくる女の子のようだ、そう思いながらもすぐ前にある男の背中を見つめる。

 (私が、抗ったならどうなるんだろう…)

 迷路のように、曲がったり真っすぐだったり細い道を通りながらも確実に学校へと向かっていく。



 今の状況のように、些細な誤解から関係のない危険事に巻き込まれそうになった時、いつも思う。


 例えば、ヨーグルトを不良の(元)番長にかつあげされた時。

 例えば、幼なじみに不良説を流されクラスメートや先生に嫌な視線で見られた時。



 “そうじゃない。”
 “それは誤解なんだ。”


 そう言えたなら、きっと今、千晴はこうして番長である近衛に手を引かれて旧校舎に向かってなんかいなかっだろうに。


 (まあ、小心者の私なんかには到底無理なことだけど…)