「好きだよ、ちはる」
「…ふーん」
ずれてる。
(私と頼の根本的な何かが…)
頼の言葉は深いのに重みがない。
それは、
きっと頼が好きの意味を分かっていないから。
何も分かっちゃいないし、分かろうともしない。
だからこそ
好きだと言っても言葉が軽く聞こえる。
…もちろん、それは頼だけではなかったのだが。
「…言葉は天を目指すが心は地にとどまる、心のともなわぬ言葉がどうして天に届こうか」
千晴は小さく呟いた。
先程まで読んでいた本で頭から離れなくなった文章。
「ハムレットかあ」
「あら、知ってるの?」
「うん、俺シェイクスピア好きなんだ」
「…ふーん(どうでもいいな)」
シェイクスピアの話題が出たからか、頼は、にこおっと笑う。
笑っているのに、千晴はぞわりと寒気を感じて今すぐ逃げ出したくなる。
「いいこと教えてあげよっか」
それに気付いたのか、がしっと千晴の肩に手を置いた頼。びくり、と揺れた千晴の肩。
「“悪魔も手前勝手な目的のために聖書を引用する”って覚えておくといいよ」
“多分、きっとこれからの事に関わってくると思うから”
そう言い残すと爽やかに頼は図書室を出て行った。
後に残るは、あんぐりと口を開けた千晴だけ。
「…もう忘れちゃったんだけど……」


