頼は、千晴よりも一つ上の学年だったが、昔から常に執拗に千晴に対して執着していた。
千晴は千晴で昔から押しに弱く、変わった髪色と瞳で周りの人目を引く頼に振り回されっぱなしだった。
ヨーグルトかつあげの件がなければ。
「頼は、どうして此処に…?」
「ちはる、放課後は必ず図書室にいるって聞いたから来てみたんだ。噂もたまには当たるもんだよな〜」
「…そうかも」
軽く答える頼に、千晴も適当そうに言った。
(何が“噂もたまには当たる”よ…)
高校入学したての千晴が番長からヨーグルトをかつあげされていた時も、いつものように確かに側に頼は居たのだ。
ただ、頼は何もしてくれなかった。
助けてくれなくとも、せめて誰かを呼んで欲しいと望みをかけて千晴が頼を見た時、千晴は愕然としたのを今でも覚えている。
頼は、微笑んでいた。
まるで恋人に向けるような優しい眼差しで千晴を見つめながら。
千晴のカップヨーグルトを片手に悠々と番長が去った後、頼は千晴の近くまでやって来て「大変だったねぇ」と優しく言った。
千晴が心の底から恐いと感じていたのは、そのガーネット色の幼なじみだったのだと今では冷静に思う。
しかも、それだけでなく翌日頼は何故か学校中にヨーグルトかつあげの件を脚色して流していたのだ。


