「だ、れ…」
千晴の両目を覆うのは冷たい体温。
「誰だと思う?」
楽しそうに くすり、と笑う声が千晴の耳にダイレクトに伝わってくる。
たった一言なのに、独特の色気を含んだ甘い声音。
あまりにも聞き覚えがある声に千晴は、むすりとした声で返した。
「は、離して、頼(より)」
「いいじゃないか〜、久しぶりの再会なんだからさ」
悪戯がばれた時の子供みたいに、ばつの悪い顔をしたのは開かれた視界に映った彼ではなく千晴の方だった。
そう、久しぶり…というのは今までこの約半年の間、千晴が彼を死ぬ気で避けていたのが原因だからである。
「それにしてもおっかしいよな〜。同じ学校、同じ通学路なのに半年以上会ってないなんて…そう思うだろ、チハル?」
にっこりと笑う爽やかな男。
独特の甘ったるい声に、甘いマスク、異国の祖母譲りだというガーネットの髪と瞳。
彼の名前は、薬袋 頼(みない より)。
九十九千晴不良説の元をつくった張本人であり、千晴の大嫌いな幼なじみであった。


