よく夏川が見せる顔。不謹慎だが、俺はこの涙が好きだった。 我を見失いそうになる。 「先生、私……」 「いいのですよ、喋らなくて。さあ、座って。今、お茶でも入れますから」 座らせた夏川を後ろに、俺は言った通りお茶をいれた。 ――そこに薬を混ぜて。 夏川は俺が守らなければならない。いくら好きとは言え、涙は悲しみだ。誰もいない、俺しかいない世界に誘おうではないか。 「はい」 「うん」 夏川がお茶を飲む。