雨のち晴






「朱里のこと、どう思ってる?」





「何すか、まじで」





ずかずかと、踏みこんで来る。


俺は言葉が出なくて、


動揺している。


何が言いたい。


何を言わせたい。


そんなことばかりが、


頭をぐるぐる。





「俺は勝手に、君が朱里を好きだと思ってる」





「…だから?」





「当たってる?」





暗くて、顔が見えない。


何を考えているか読めない。


大体何で、こんなこと。





「だったら、何ですか?」





「諦めてほしい、朱里を」





俺は、思わず。




「何なんだよ、あ?」




丘谷の胸倉を掴んだ。


もう我慢が出来なくて。


何で俺が、お前にこんなこと


言われなきゃなんねーんだよ。


意味、分かんねえよ。





「大体、何でお前がこんなことっ…」





「俺は、朱里が好きなんだ」




丘谷は、簡単に。


あいつを。


朱里を好きだと、言った。





「何、言って…だよ」





「俺は朱里を守りたい。あいつの傍で、ずっといたいと思う」





「っざけんな…」






ふざけんな。


ふざけんな。


ふざけんな。






「だからって何だよ。てめーが好きだからって、俺に言う必要あんのかよ!」





「朱里を、苦しめないでくれ」





「は?」






思いもよらない言葉で、


思わず手を緩めて


丘谷から離れる。


俺が、朱里を…苦しめてる?






「そもそも、君は彼女がいるんだろ?」





「それは…っ、」





違う。違うんだ。