私は金づちではない。
それでも10メートルはあるんじゃないかって津波の中をもがくしかできなかった。
手を繋いでいためぐみの息子もめぐみも、周りには誰もいない。
「誰か…助けて!」
声に出ていたかすらわからなかった。
それでも、死と隣り合わせ…すぐそこまで迫った死から逃れようと私は必死になっていたんだ。
近くに流れていた元は家屋であろう物に捕まって、どうにか必死に助けを呼ぶように叫ぶしかなかった。
一分、十分、一時間…どれだけ流されていたかはわからない。
家屋の屋根に捕まったまま流されている私を助けてくれたのは40代位の見知らぬ男性だった。
「大丈夫か!?」
その言葉だけは今も鮮明に覚えている。
あぁ、助かったんだ…
そう実感した途端に涙が止まらなかった。

