私は雛子ちゃんに手招きされて、それに付き従うように雛子ちゃんの実家にお邪魔した。


「座って待ってて、お母さん呼んで来るから。」


そう言って指されたクリーム色のソファーはふかふかでまだ頭の中がボーッとしたままの私を丸ごと包んでくれているような、暖かい場所だとそう感じた。


「あゆさん、あゆさん!」

「あ、はい!」

「うちのお母さん。」


どれくらい放心していたかわからないけれど、気付けば目の前に雛子ちゃんがいた。
雛子ちゃんの後ろには私の母親と同じくらいの年代の雛子ちゃんのお母さん。

私はソファーに預けていた体を起こし立ち上がって頭を下げた。


「初めまして、急にお邪魔してすみません…」

「雛子から聞いたよ。辛かったでしょうね…」


雛子ちゃんのお母さんの言葉に私は小さく頭を振って、ぎこちなかったかもしれないけれど…今できる精一杯の笑顔を見せた。


「お風呂今沸かしてるからね。沸いたら入りなさい…あとご飯も作らなきゃね。雛子、あゆちゃんに布団出してあげなさい。」

「うん。あゆさん、こっち!」


私はこの時にまた思った。

日本って良いな、日本人って良いな。

日本人でよかったな、と心の底からそう思ったんだ。