何時間走ったのかすらわからない時間感覚の中で、徐々に被害の少ない場所に入り込んだ。

私はそこでようやく現実に帰った気すらしたんだ。


「うちの実家ここからすぐだから。」

「無事だと良いね…」

「大丈夫、大丈夫!うちの親なんて元気すぎて困るくらい元気なんだから!」


それが強がりなのか、本当にそう思っているのかは私にはわからなかった。

でも…坂田さんが両親を信頼しているのだけは伝わってきた。


「ここ通学路だったんだよね。」


見た目は被害なんてない道路、それでも坂田さんにとっては被災地に見えたのかもしれない。

通学路と言っていた道から数分走った場所にある紺色の屋根の一軒家、その一軒家の前に車を止めた坂田さんが

「私の実家だよ。」

そう、笑顔で教えてくれた。


「ここら辺は被害なかったんだねー。」

「よかった…坂田さんの両親は大丈夫かな?」

「大丈夫だよ。それと坂田さんじゃなくて良いから、雛子で良いよー。」


何だか普通すぎて、何もなく友達になったような態度を取ってくれる坂田さん…雛子ちゃんは私よりもずっとずっと大人だって改めて思った。