この残酷な状況をほかの地域の人達がどう思い、どう感じながら見ていたかはわからない。

津波被害がなかった…地震被害が少なかった地域の人達はきっとこれが本当に日本であった出来事なのか、そう考えたのかもしれない。



呆然としたまま足場を確かめてゆっくり前に進めば、見えてきたのは変わらずに地獄絵図のような光景だった。

流されてきた車の横を通り過ぎれば、中に人がいる。
でもそれは私のように息をしている人じゃない……社会人になって幾度も見てきた物よりもずっとずっと残酷だった。


「………ごめんなさい…」


それは本当に自然と出た声だったのかもしれない。

医療従事者と言え、私は医者じゃない。
看護師の資格を持つただの小娘なんだ。


1時間…その間に何人の息を引き取った人を見たかわからない。
見る度、ただ私は謝るしかできなかった。



そして願った。

1時間でも一分でも、一秒でも早く…家族の元にこの人達が還れるようにと…。





願いながら高台をひたすら歩いても、土地勘のない私には今どこを歩いているのか全くわからなかった。


ただ歩いて、朝に出てきたはずなのにもうお日様は西に傾きはじめた頃、私は一人の女の人と出会った。