避難所を出て、ほんの少し歩いただけで私はまた泣きたい衝動に駆られた。

私の知る気仙沼市は漁業が豊かで、都会とは言えなかったけど…それでも暖かい場所だった。


それが今、私の目の前に広がるのはただただ残酷な光景。
戦争か何かがあったのかと思うように、何もなかった。

家屋が立ち並んでいたはずの場所は骨組みすらなく、基礎のコンクリートが残っていれば良い方だった。
港にあったはずの漁業船は街まで流されてきていて、無惨に壊れた家屋らしい物の残骸が海水に漂うように浮いていた。

言葉すらでなかった。

車もまるでミニカーのおもちゃのように漂って……


あちこちで煙や炎が立ち込めて…それを報道しようとしているのかはわからないけど、ヘリコプターが数機飛んでいた。