「気をつけるんだよ?」
「もし戻れそうになかったら戻ってきなさいね?」
新田さんは私の手を握り締めてくれた。
井上さんは自分の着ていたジャンパーを私に着せてくれた。
清水さんはこっそり井上さんが着せてくれたジャンパーのポケットにお金を入れてくれた。
私は清水さんがいなければ死んでいた。
私は井上さんや新田さんがいなければ寒さと恐怖に震えていた。
見ず知らずだった三人の優しくて暖かい人達に出会えた私は、こんな状況でも……すごく幸せ者なんだと思えた。
「必ず戻ってきます!だから……だから、それまで風邪引いたりしないでください…!」
「そうだね、気をつけなきゃね。」
笑顔でひと時のさようならをしようと思った。
東京に戻って、またすぐにこの気仙沼市に戻ってこようと誓った。
「いってらっしゃい。」
まるで、お母さんのような二人。
まるで、お父さんのような人。
家庭環境にあまり恵まれなかった私には喜んじゃいけないかもしれないけど…この時だけは嬉しかったんだ。