寂しい、や、悲しい、そんな感情を出さないようにしているりえちゃんに私は悟った。

お母さんも被災して、安否不明なんだ、と。


「……りえちゃん、チョコ好き?」

「だいすき!」

「じゃあ…お友達と分けてね。」


海水に浸ってしまってはいたが、ポケットに入ったままだったチョコの包みを四つ、りえちゃんの小さな掌に乗せた。

車の運転をしながら食べるのに入れたままだった小包のチョコを入れっぱなしだったのが幸いしたのかもしれない。


「お姉ちゃんはこれしか持ってないから…大事に食べてね。」

「うん!ありがとう、あゆお姉ちゃん!」


本当に、本当に嬉しそうに笑顔を見せてくれたりえちゃんに私も笑顔になれた。

私があげた小さなチョコを両手で握り締めて父親であろう人のところに走って行くりえちゃんに手を振った。