「それを云うなら、俺も邪魔なのかもな」

「そんなこと……!」

「せっかく来たんだしさ、光春達は光春達で楽しんでいるようだし、俺達も楽しもうぜ?」

「……うん」


 ――けれど、海に来なきゃよかったと思う本当の理由は、他にもう1つある。

 “金槌”と云えばわかるだろうか、そう……私は16歳になった今でも泳げないんだ。

 泳ぐ練習を出来る限りやったけど、それでもダメだった。全然うまくなりゃしない。

 だからもう諦めちゃった。私には生まれつき、泳ぎの才能なんてないんだって。


「じゃあ俺達も泳ぎに……」

「あー、私喉渇いちゃったなぁ。ちょっと海の家で飲んでから行くから、亮は先に海に入ってて?」


 イタイ言い訳。

 亮は「わかった」って云うのかと思ったけど、全然違う答えが返ってきた。


「……俺も海の家に行くよ。女の子1人が海にいたら、なにかと危ないからな」


 亮は優しい。男女関係なく、誰にでも。だから結構モテる。

 なのに、なのに……。

 可愛くない容姿をしたこの私のそばに、亮が常にいるのはなんでなんだろう?