僕の愛した生徒



ようやく到着した僕の家。

奈菜は少し緊張した面持ちで
“お邪魔します”と部屋へ続く短い廊下を静かに歩く。

僕がリビングのドアを開けて入ると、奈菜も続いて入り、珍しそうにキョロキョロと部屋を見回して


「秀の匂いがする〜」


と無邪気な顔を向けた。


「そうか?

今、飲むものを入れるから適当に座って」


僕が言うと、奈菜はソファーにちょこんと腰をかけて、また部屋を見回していた。



僕はさっきコンビニから買ったものを袋から出し、飲み物を準備する。


「秀のお家、沢山本があるね。
見てもいい?」


戸棚からマグカップを二つ出しながら


「いいよ。この部屋では遠慮しなくていいから自由にして」


そう言うと、奈菜は早速ソファーを立ち、本棚に並んでいる本を手に取って、パラパラと捲っては本を棚に戻し、次々に本を変えていった。


僕はキッチンに立ったまま、奈菜の様子を眺める。

奈菜は本を開く度、つまらなそうな顔をしてそれを閉じる。


そんな奈菜を見て、思わず口元が緩む。


たぶん、そこにある本で奈菜が楽しめるものはないはず。

だって、奈菜が手に取る本は全てが洋書で、英語で書かれているから。


でも、同じ行動を繰り返す奈菜は見てて飽きなかった。



そうしていると、やかんがピーッとお湯が沸いた事を知らせる。


僕はコーヒーとミルクティーにお湯を注ぎながら


「奈菜、ミルクティーが入ったよ」


と声を掛けるが、その声が届かなかったのか奈菜は返事をしない。

僕はもう一度、飲み物をかき混ぜながら奈菜を呼ぶ。


「奈菜、座って」


それにも返事をしない奈菜。



まったく奈菜は……

一体、何に集中しているんだ?



僕はマグカップを2つ手に持ち、顔を上げた。