僕の愛した生徒



その日は、午前中に予定されていたサッカー部の練習を終えた後で一度、家に戻ってから会いたいと言う奈菜の意向に従って、奈菜からの連絡を待った。


夕方近くになり、ようやく鳴り出した携帯電話。


僕が奈菜の家の近くまで迎えに行くと、一泊分の荷物が入っている少し大きめの鞄を肘にぶら下げて、奈菜は既に待っていた。


車を止めると
“遅くなってゴメンね”と直ぐに乗り込む奈菜。

当たり前に助手席に収まる奈菜を見て、僕は車のアクセルを踏んだ。


途中でコンビニに寄り、
奈菜を車に残したまま、僕は明日の朝食を二人分と、お菓子や飲み物を買う。


そして、僕が大きく膨らんだ買い物袋を持って車に戻ると、奈菜は“こんなに買ったの?”と目を丸くし、少し呆れるように笑った。


「足りないよりはいいだろ?」


僕がそう言うと
“確かにそうだけど”と奈菜は無理やり納得するように頷いた。


そして、再び動き出した車の中。

ご機嫌な様子の奈菜はあどけない表情で、窓の外を流れる景色を見ていた。


「奈菜、今日はお母さんに何て言って出て来たんだ?」

「“みっちゃんの家でお泊まりパーティーをしてくる”って」


僕の方を向いて奈菜は照れたように話した。


「そうか」


僕はハンドルを握り、前を向いたままで返事をする。


「少しは嘘が上手になったと思わない?」


無邪気に言った奈菜のその言葉に僕は苦笑いを浮かべる。



ウソ…か…

奈菜にそうさせているのは僕なんだよな。



あと二年半か……