僕の愛した生徒



日が傾き、西日が窓から差し込み始める。

それでも尽きることのない話。

机の上に並んでいる二つの缶の中身は既に空になっていた。


「奈菜、そろそろ……」


僕は切り出した。


「そうだね。帰らなきゃね」


奈菜は席を立とうとした。


「あぁ…でも、ごめん。
今日はまだ仕事が残ってて一緒に帰れないんだ」


僕が申し訳なく言うと、奈菜は


「そんなこと気にしないで。
秀は仕事、頑張ってね」


と立ち上がりながら、ふんわりした笑顔を僕に向けた。

僕も席を立つ。


「奈菜、また今度、一緒にでかけような」

「うん」

「因みに次はどこに行きたい?」

「どこでもいいの?」

「あぁ、いいよ」


僕がそう言うと、奈菜は考える素振りを見せずに即答した。


「じゃあ、秀のお家!」


「僕の家でいいのか?」


「うん。秀の家がいい!!
でも……ダメかな?」


輝くような笑顔を見せた後に、不安げに上目遣いで訊く奈菜。

僕が“いいよ”と答えると、奈菜の顔には再び笑顔が広がった。



そして、僕たちが戸の前に来た時


「秀、忙しいのに時間を作ってくれてありがとうね」


と奈菜はやわらかく微笑んだ。


僕が閉めていた鍵を開けると、奈菜は部屋を出ようと引き戸に手にかける。


「奈菜?」


僕の声に首を傾げて振り返る奈菜。


僕は奈菜を引き寄せて、
見上げるその額にキスを落とし、そして唇に唇を重ねた。


それに少し驚いている奈菜。


「これで、仕事も頑張れる」


僕がそうイタズラに笑うと、
今度は奈菜が背伸びをしてキスをしてきた。


「秀、また明日ね」


少し驚く僕に奈菜もイタズラな笑顔を向けて、
この部屋を後にした。