僕の愛した生徒



手を繋いだままで歩く園内。


いつの間にか、混雑していた園内の人影はまばらになり

それまでは気にならなかった蝉の声が響き始めた。


僕が腕時計に目を落とすと、時間は17時を過ぎようとしていた。



もう、こんな時間か。

今からここを出発すれば21時には家に着けるな。



「そろそろ帰ろうか?」

「もう?」

「だって、5時を過ぎているよ?」

「……そっか」


奈菜は寂しそうに呟いた。



暦ではもう夏の終わりだとゆうのに、傾いた太陽の日差しはまだまだ強い。


僕たちはゲートを目指して歩き、そこを出ようとしたところで奈菜の足は止まり、繋いでいた手が離れた。


「ねぇ、秀?
最後にもう一枚だけ写真を撮っていい?」


僕は振り返って“いいよ”と返事をして、カメラを取り出し、それを構える奈菜を見つめた。


真剣な眼差しでシャッターを押している奈菜。


僕の瞳に映ったその横顔はとても切なそうで、僕では計り知れない奈菜の心を見た気がした。



なぁ、奈菜……?

もし君が生徒でなければ
僕は君にそんな顔をさせずにすんだのかな?



「秀、ありがとう」


カメラを鞄に戻した奈菜は僕に
はみ出しそうな笑顔を向けて、僕の手をまた握った。