その時
そっと開けた僕の目に映ったのは
スカートの裾を強く握り締める手。
顔を上げると、そこには玲香ではなく…
固く目を閉じている奈菜がいた。
奈…菜…?
僕は目を見開いた。
世界の音は途切れ
僕の中でずっと燻(くすぶ)り続けていた想いが崩れ始める。
そして、
僕の目の前にある世界は原色を映し出した。
僕は何をしている?
どうかしている。
玲香が此処にいるはずない。
僕の元へ戻ることなんてもうないんだ。
玲香は今、他の奴と生きているというのに…
僕は奈菜の頬にそっとキスをした。
目を開ける奈菜。
「先生?」
奈菜の真っ直ぐな瞳が僕を見つめる。
奈菜は玲香じゃないんだ。
「奈菜、ごめん」
僕は奈菜を包むように腕を回した。
「大丈夫だよ」
奈菜の声が優しく柔らかく僕の胸に響く。
「ごめん…」
僕は謝る事しか出来なかった。
そんな僕に奈菜も腕を回し、
「気にしなくて大丈夫。
少し驚いちゃったけど…」
と和らいだ表情を僕に向けた。



